フランス旅行中のトラブル、盗難、事故、病気などについて
外国を旅行していると、実にさまざまなトラブルにあいます。
国によって、その内容や深刻度は異なります。
私はもっぱらフランスに行くので、以下では主にフランスにおける
私の実体験を交えながら記していくことにします。
★盗難について(スリ) .
フランスを旅行していて、最も出会う確率の高いトラブルがこの「盗難」です。
いわゆる「スリ」「かっぱらい」「置き引き」「強奪」の類です。
いくら用心しても用心しすぎることはありません。
「私はしょっちゅう外国に行くけど、
まだ一度も盗難にあったことがないよ」と自慢げに話す人がいますが、
それはこれまでただ単についていただけの話に過ぎません。
私自身、そして私の周囲の知り合いの研究者などの話を総合すると、
向こうに行く回数が増えれば増えるほど、盗難に遭う確率も機械的に上がっていきます。
要は単純に確率論の問題なのです。つまりいつかは必ず何か起こる、ということなのです。
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私が最初に「スリ」にやられたのは、1987年に最初にフランスに留学して3週間後のことでした。
場所はマルセイユで、ジプシーっぽい、数名の子供のグループに取り囲まれたのです。
「お金を恵んでくれ」と書いた紙を持ってこちらの注意を引きながら、
気がついた時には、ジーンズの尻ポケットにねじ込んであったサイフがなくなっていました。
すられた瞬間には、まったくなにも感じませんでした。すごいテクニックです。
しかしまぁ、これはバカな観光客がよくやられる典型的な手口ですね。
私もバカでした。
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私はそれ以来、スリには非常に気をつけるようになり、幸いスリの被害に遭うことはありません。
カバンの口を開けられたり、手を突っ込まれそうに
なったりしたことはあります(フランス以外ではローマとヴェネツィアでも)。
家内はパリのメトロとバスの中でカバンに手を突っ込まれました(被害は無し)。
子供や女のスリは、時間を聞いてきたり、何かを話しかけてきたりして、
こちらの気をそらせておいてバッグや上着のポケットに
手を伸ばしてきます(指の力が、女とは思えないほどすごく強い)。
メトロの中で何か話しかけられたら、即警報モノです。気をつけましょう。
パリのメトロの車内
パリのメトロは、スリの巣窟です。
ピラニアがウヨウヨいるプールみたいなものです。
しっかりカバンやバッグをカラダの前に抱えて、両手でしっかりと押さえるようにして、
「自分は注意しているんだぞ」というところを見せなければなりません。
私の知り合いの教員で、パリのメトロの駅のエスカレーターで前後をスリのグループにはさまれて
腰ポーチ(お金やホテルの鍵やらいろいろ入っていた)をあっという間に切って盗られた人がいます。
その先生は、イタリアでニセ警官に現金を盗まれたこともあるそうです。
また別のある教員は、メトロの中で20万円近い現金をすられました(そんな大金を持ち歩く方が悪い)。
とにかく、パスポートやクレジットカード、高額の紙幣などは衣服の中の秘密の場所に隠します。
サイフはチェーンをつけてベルトに固定します。そもそもサイフには少額しか入れません。
★盗難について(かっぱらい・強奪) .
私はあからさまなかっぱらい(目の前でいきなり盗まれる)には遭ったことがありませんが、
学生や知り合いの実体験をいくつか紹介します。
●カフェに座って携帯電話を目の前のテーブル置いておいたら、歩いてきた男にいきなりかっさらわれた(スペイン)。
●ATMでカードで現金を下ろそうとしていたら、いきなり現れた男にカードをかっさらわれた(フランス)。
●道端でスマホを操作していたら、いきなり若い男に、手に持っていたスマホをかっさらわれた(フランス)。
●公衆電話ボックスの中で、目の前の電話機の上に現金の入ったポーチを置いて話していたら、
横からいきなり手が伸びてきてそのポーチをかっさらわれた(ドイツ)。
●知り合いのある女性の研究者は、ひとけのないブリュツセルの地下鉄の通路で複数の男に羽交い締めにされて、
何から何まで強奪されました(ベルギー)。こうなるともうお手上げですね。
●道路を歩いていたらいきなり男がぶつかってきた。紙袋に入ったボトルが落ちて割れた。
その弁償と称して多額の金を払わされた(アメリカ)。
これは強奪というよりも、難クセつけて金をぶん盗るわけですね。いわゆる「ボトルマン」というやつです。
●アイスクリームをつけられて、それに気を取られている間にサイフを盗まれた。これも有名な手口です(イタリア)。
●露店のオヤジに話しかけられ、気を取られているうちに、別のスリに財布をすられた(スペイン)。
露店のオヤジとスリは、恐らくグルです。
★盗難について(車上荒らし) .
私はこれに実際に遭ったことがあります。実体験です。今からもう10年以上前の話です。
エクス・アン・プロヴァンスのハーツでレンタカーを借りて、ロマネスク調査旅行に出発し、
まず「シルヴァカーヌ修道院」に行きました。
3月の閑散期でした。修道院の駐車場にクルマを駐めて(他に駐まっているクルマはありませんでした)、
修道院を見学して戻って来たら、クルマの後部のサイドのガラスが割られて、
ドアを開けられ、後部座席のシートを倒して、
リアに入れておいたスーツケースその他一式がきれいになくなっていました。
近くの警察(Gendarmerie)に行き、盗難調書を作成してもらいました。
これは盗難保険の請求に必要です。
気が動転していて、何を盗られたか聞かれてもすぐにははっきりと答えられませんでした。
後日警察から電話があり、私の荷物のうち、
金にならないもの(衣類とかクスリ類とか)が、近くの田舎道に点々と捨てられていたそうです。
シルヴァカーヌ修道院の駐車場は、同じような被害が続出していたようで、
その翌年から、監視人が置かれるようになりました(ただし夏期のシーズン中のみ)。
(ちなみに盗難保険は、いくら高額のものに入っていても、ワン・アイテム10万円が上限で、
しかも減価償却まであるなどとは、この時初めて知りました。)
閑散期の地方の観光地では、クルマの車上荒らしに注意しなければなりません。
特に、駐車場にまったく他にクルマが停まっていない時には、
そこに1台だけ駐めるのはかなり危険です。
ホントに危険です。
2007年に、ガール県のラ・ロック・シュル・セーズを訪れた時のことです。
ここは旧市街はクルマは禁止で、村の下の駐車場に駐めなければなりません。
しかし閑散期の午前中ということもあって、広~い駐車場には1台も駐まっていません。
とりあえず駐めて車外に出て、うーん、これは危ないな~、と思っていたら、
いかにも怪しいクルマがそーっと駐車場に入ってきて、
こちらがクルマを駐めて旧市街観光に出かけないと見て取るや、
何にもせずにまたふら~っと出て行きました。
恐らくこれはほぼ確実にドロボーさんだったと思います。獲物を物色していたのでしょう。
そのクルマの後ろ姿だけ、とっさに写真に撮りました(↓)。いやぁ、危ない危ない。
また、こんなこともありました。
2004年に、ラングドックのアンブリュッスム(Ambrussum)というローマ時代の遺跡を訪れた時のこと。
そんなにメジャーな観光地でもないし、不便な所にあり、他に訪れる人もなく閑散としていました。
クルマを置いて見学をして、クルマに戻ったら、ちょうど私のクルマの隣に自分のクルマを駐めて、
私のクルマの中をのぞいているようなそぶりをしていた男がいました。
この男、人の良いおじさん風でしたが、私が近づいてくるのを見るや、
即座に懐からこの村のパンフレット(しかもしわくちゃの古いやつ)を取り出して、私に渡して、
そして堂々と言うのです。
「私はこの村の観光協会の者です。あなたはこの遺跡に興味があるようですね。
この村には他にもこんな見どころがありますよ。ぜひ訪れて下さい。では。」
一方的にしゃべって、そして去って行きました。
これドロボーですね。
私のクルマの中を物色していたのです。
そしてクルマの持ち主と遭遇した場合に言い訳するための小道具までちゃんと準備していたのです。
危ない危ない。
私はクルマには何も積んでいなくて、しかもそれが分かるように、わざわざ後部座席の背もたれを倒して、
外からリアの空っぽのトランクが丸見えになるようにしていました。
盗むものなんてなんにもないよ、と伝えるために。
前にシルヴァカーヌ修道院でやられた経験からそうしていたのです。
この写真(↑)は、シルヴァカーヌ修道院の駐車場で、盗難に遭った翌年に再び訪れた時に撮影したのですが、
なんとこれを撮影している時にも、この駐車場に何の目的もなさそうにフラーッと
入ってきてそのままフラーッと出て行くクルマがいました。
これもドロボーさんの確率がきわめて大です。
ひょっとしたら、1年前に私の荷物を盗んだのと同じやつか?!
思わずそれが駐車場を出て行くところを撮影してしまいました(↓)。
いやぁ、危ない危ない。
とにかく、クルマで田舎の観光地をまわる時には、荷物はなるべくホテルに置いて、
何も積まないで行くのが重要です。
荷物を積んで行く時は、駐車場に他の観光客のクルマが駐めてあることが大切です。
閑散としたところに駐めるのは避けましょう。
盗られて困るもの(パスポート、クレジットカード、現金、ノートパソコン、
スマホ、デジカメの写真データなど)は、
常に身につけて歩きましょう。
あとは全部盗られても構わない、という心構えが必要です。
そして、実際盗難に遭って、そうしたどうでもいいものが盗まれても、
「ああ、盗られたな」くらいの軽い気持ちで対処しましょう(なかなか難しいかも知れませんが)。
★店員のごまかしについて .
釣り銭をごまかす店員もたまにいます。
特に日本人観光客は、ごまかされてもよく分からなかったり、
あるいはあまり強くクレームをつけないことが
「日本人はやりやすい」という固定観念を与えているようです。
私は一度、フランス国鉄の地方の駅の切符売り場の窓口でやられかけました。
10フラン(当時)の切符を買って100フラン出したら、
90フランのおつりが返ってくるところが20フランくらいしか返ってきませんでした。
まだ若いおネエさんの駅員でした。
「おつりが間違ってる、私は100フラン出したんだ」とフランス語で文句を言うと、
「あら、そう、ごめんなさい」と、確かめもせずに足りない分をすぐに寄こしてきました。
明らかに確信犯ですね。
あわよくば70フランせしめるところだったのです。
駅の窓口でこんなことがあるとは、日本ではおよそ考えられません。
パリのカフェでは、二重払いさせられそうになりました。
家内とコーヒーを頼んで、持ってきた時にウエイターにお金を払いました。
カフェを出る時に、その同じウエイターから
「おい、代金を払ってないぞ、払っていけ」と言われました。
「払ったよ」と言うと、「レシートが破られてないから払ってない」と言います。
確かにレシートが破られてません。
こちらも負けずと「さっきあんたにいくらいくらの紙幣で払って、おつりも寄こしたじゃないか」と文句。
向こうはすぐに「ああそうか、じゃいいよ」と言って引き下がりました。
これも、あわよくば二重取りして自分の懐に入れようとした可能性が大です。
このウエイターはいかにも普通の日本人観光客からフランス語で反撃されるとは思っていなかったのでしょう。
それ以来、必要がなくても、払ったらレシートを自分で破るようにしています。
きっと少なからぬ日本人観光客は、言われるがままに払ったりしているのかも知れません。
(イメージ)
★クルマのトラブル(事故など)について .
フランスでレンタカーを借りる時には、オプションで「フルカヴァー」に入るべきです。
これを決してケチってはいけません。
保険についてはこの「省察」の「ロマネスクめぐりについて」ですでに記しておきましたので、そちらをご覧下さい。
私はこれまで幸いにも大きな事故を起こしたことはありません。
慣れない外国で、慣れない左ハンドルと慣れない道路事情です。安全運転第一です。
小さなトラブルはいつくか経験しています。
まず、パンクです。
ダートをスピード出して走っていてパンクしたこととか、
借りた次の日にすでにタイヤの空気が抜け始めてパンクしていたとか。
パンクしたら、自分でタイヤ交換です。
(※最近のパンク事情については「研究室日記 2023年」をご覧下さい。)
ちょっとこすったとか、ポールにぶつけてへこました、とかもよくあります。
これも「フル・カヴァー」の保険に入っておれば、返却時にサインだけでオーケーです。
南フランスの片田舎の山の中で脱輪したこともあります。
これが今までで一番の危機だったかも知れません。
この時は、たまたま通りかかった近くの村のおっちゃんたちに助けてもらいました。
一時はどうなることかとヒヤヒヤしました。
高速道路の自動料金所で、トラック専用レーンに入ってしまったこともあります。
精算口がはるか高いところにあって自分には届きません。
後から来たトラックの運ちゃんにブーブークラクション鳴らされて困りました。
すぐに係の人が来てくれてゲートを開けてくれました。
★タクシーのトラブルについて .
いわゆるボッタクリの「白タク」です。
私はこれにギリシアのアテネでやられました。1988年5月のことです。
アテネのボッタクリ・タクシーは有名です。
しかし当時の私はそれを知りませんでした。
深夜にアテネの空港に着いて、そのまま待っていたタクシーに乗ってアテネの市内に向かいました。
白タクでした。
今思うと、最短距離では行かず、あちこち回りながらアテネ市内に向けて走っていました。
市内のシンタグマ広場に着いたら「5400ドラクマ」とメーターに出ていて、その金額を請求されました。
しかも深夜割り増しとか言って、6000ドラクマくらい払わされました。
日本円にしてそれでもせいぜい3000円くらいだったでしょうか。
あまり疑わずに支払ってタクシーを降り、深夜でも空いていた近くのホテルに入りました。
ホテルの主人にこのことを話すと、
「そりゃあ、あんた、ボラレたんだよ。タクシーのナンバー控えたかい?
今からツーリスト・ポリスに電話して取り返してあげるよ。」
と言われました。
こちらはボラレているという意識はなかったので、ナンバーを控えるなんてしていません。
「5400ドラクマ」というメーターの数字は、実はなんと小数点が入っていて、正確には
「540.0」ドラクマだったのです。
10倍もの額を払わされたことになります。
あの時、私に10倍の金額を要求しているアテネの運転手のおニイさんの横顔は
脳裏に焼き付いています。
今思えば悪そうな横顔でした。
彼は今頃、どこで何をしているのでしょうね。
それ以来、ヨーロッパでタクシーにぼったくられたことはありませんが、
なるべくホテルやレストランに呼んでもらったタクシーを使うようにしています。
それなら多少は安心です。
でも少しでも怪しいと思ったら、ナンバーを控えることをオススメします。
ちなみにギリシアでは、カフェとかにいると、
いきなり日本人の「××大学教授・山田太郎」みたいな名刺を見せて、
「私は日本人大好きです! あなたと友だちになりたい! 今夜、一緒に飲みに行かないか?」
みたいに声をかけてくるやつが何人もいました。
危ない危ない。
有名なアテネのボッタクリ・バーのお誘いです。
そんなのについて行ったら大変なことになります。
アテネでは、訳の分からないホテルやレストランの怪しい客引きも
しょっちゅう「おまえは日本人か?」と言って声をかけてきました。
「ノン。私は日本人ではない。フランス人だ。」
とフランス語で返すと、
「そうか、じゃいいや」と言って離れていきます。
中には、どこからどう見ても日本人にしか見えない私の顔をマジマジと見て、
「おまえは本当にフランス人なのか?」と尋ねてくるやつもいました。
「そうだ。フランス人だ。」
と言うと、あっさり離れていきました(笑)。
きっと日本人観光客は、簡単に引っかけられる格好のカモなんでしょう。
アテネのシンタグマ広場カフェ。変なやつに何度も声をかけられた(1988年) | ギリシアのツーリスト・ポリス。観光客が集まる場所にいる (1988年) |
★病気について .
私は、これまで幸いなことに、ヨーロッパにいる間に重い病気にかかったことはありません。
骨折とか手術で入院とかといったこともありませんでした。フランスの医者にかかったこともありません。
なので、フランスでの病院のかかり方については、経験がなくアドバイスなどもできません。
ひどい風邪とひどい下痢ならあります。
そのダブルもあります。
一度は、帰国の時にひどい発熱が始まり、飛行機の中でトイレに通いながら40度くらい熱が出て、
地獄の12時間を経験して日本に着いたこともありました。
帰国して、はうようにして自宅近くの病院に行ったら、医者から
「ああ、生ガキでも食べたんですか~? とりあえず点滴しましょうね~。」
となったこともありました。ノロウイルスだったのでしょうか?
数日後に回復しました。
ひどい下痢は、フランス留学生活中に一度、デンマークに旅行した時にありました。
とにかく一晩中、まるでホースから水を勢いよく流し出すような下痢です(きたない話でゴメンナサイ)。
ほとんど水のようなものが、ひたすらすさまじい勢いで放出されます。
それが30分おき、1時間おきに襲ってくるのです。
痛みはありません。
しかし眠ることは出来ませんでした。
それがまるまる一晩、そして翌日も一日中続いて、そのあとようやく次第におさまってきました。
こんな下痢は、日本にいるときには後にも先にも経験したことがないので、
やはり外国で何か悪いものを飲み食いしてしまったとしか考えられません。