フランスの「教会」と「聖堂」の日本語表記について


フランスで教会は「église」です。日本語のカタカナで表記すると「エグリーズ」ですね。
でも、ひとことで「教会」と言っても、組織としての「教会」なのか、それぞれ個別の建築物としての「教会」なのか、
日本語では区別できません。
組織としての「ローマ・カトリック教会」も、小さな村に建っている「サン=ミシェル教会」も、どちらも「教会」です。

フランス語では、頭の文字を大文字で「É」と書いて「Église」とすると「組織としての教会」、
小文字で「église」とすると個別の教会堂とするというような大まかなやり方はありますが、
日本語にはこの「大文字」「小文字」という区別がないので、なかなか難しいのです。
もっとも、フランス語でも、地方の個別の教会堂の名称を記す場合には「Église Saint-Michel」などと大文字で表記するので、
必ずしも統一されているわけではありません。

日本では最近は、組織としての教会は「教会」、個別の建物を指す場合は「聖堂」とか「教会堂」というふうに表記することが増えてきました。

後者については、例えば
「ショディヤックのサン=マルタン聖堂」とか「オーモン=オブラックのサン=テティエンヌ聖堂」とか、
あるいは「オーモン=オブラックのサン=テティエンヌ教会堂」とか。

でも、一般の読者や一般のロマネスク愛好家の間では、まだまだ普通にすべて「教会」というふうに表現されます。
また、そのほうが、なんとなくもったいぶっていなくて自然に聞こえます。
地方の田舎の村の小さな教会まで、いちいち「聖堂」とか「教会堂」というふうに表記するのは、
学問的には正確なのでしょうが、やはり煩雑で、何かもったいぶって構えた感じが出てしまいます。

逆に、フランス語において、大文字小文字の違いはあるかも知れませんが、
「組織」としての教会も、個別の「建物」としての教会も、両方とも同じように「エグリーズ」と「読む」ことの意味を、
日本語で「教会」「聖堂」「教会堂」と区別してしまうことによって、大なり小なり阻害してしまっているということは、果たしてないのでしょうか?
あれこれ考えるにつけ、なかなか難しい問題であると思います。




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