怒る人(怒鳴る人)について(2013.10)


 しばらく前に、ある大きめの病院に行った時のこと、
 会計の窓口で自分よりも少し若いくらいの男が、窓口の若いおネエさん相手にデカい声でヤクザみたいに怒鳴り散らしていました。
 「ゴルァーッ、いったい何やってんだよー! いつまで待たせやがるんだぁー!」

 病院のホールは静まりかえって、会計を待っていた他の患者たちもみんな息を飲んで聞き耳を立てています。
 そりゃあ会計が遅くてイライラするのは分かるが、怒鳴り散らすのはいけません。
 この前も、小田急町田駅近くの「ドトール・コーヒー」で、
 オヤジがバイトのおネエさん相手に大声で「なんでドトールには『つまようじ』が置いてないだぁー!」と言って怒鳴っていました。

 例えば「ドトール」でもこのテの怒鳴り客をよく見ます。
 バイトのお兄さんを、ひたすら罵倒しつづける、茶髪のホストみたいなのもいました。
 ものすごい勢いで罵倒し、挙げ句の果てに「
なんだーっテメエはー! たかが店員のクセにー!!」ときました。
 この「たかが店員のくせに!」というのが、すべてを物語っているような気がします。

 なんでそうやって大声で怒鳴るんでしょうか?
  男も女も、とにかくやたら怒ったり怒鳴ったりする人間は野蛮だと思います。
 そうやって怒鳴る人は、例えば欧米に行ったら、あまり怒鳴りません。
  例外もいますが、多くの場合、彼らが怒鳴るのは日本の中でだけ、あるいは日本人に対してだけ、なのです。

 なぜか? 
 言葉の問題もあるけれども、それと同時に、例えばヨーロッパで同じようになんの自制もなく自分勝手な怒りを相手にぶつけたり、怒鳴り散らしたりしたら、
 同じくらい強力かつ強烈な反撃が相手から返ってきます。
 そして正面衝突のケンカと怒鳴り合いが始まります。
 これはホントです。
 
 ヨーロッパの店員はとても強い。
 店員も駅員も車掌も郵便局の窓口も、男も女も、誰も彼もみんな強い。
 日本のようにヘンに客を神様だとは思っていません。
 
 一度、フランスのレストランで、クレームをつけた客とその店のシェフが、
 店の前に出てものすごい勢いで怒鳴り合ってケンカしているのを見たことがあります。
 文字通り「表に出ろ!」ですね。
 日本では、恐らくあり得ない光景だと思います。

 私がとてもイヤなのは、日本のオヤジやオバサンたち(あるいは若者たちも)が相手を怒鳴るのは、
 それは、相手を怒鳴ってもいい相手だと思っているからです。
 
安心して怒鳴れるから怒鳴るのです。
 安心して怒りをぶつけることが出来るからぶつけるのです。
 特に店員・スタッフからは、お客は決して「反撃」に遭うことはありません。

 多くの場合、例えば日本人の店員はひたすら低姿勢であやまります。
 ひたすらあやまって嵐が過ぎ去るのをじっと待っておれば、事なきを得られるのです。
 
 怒鳴る側もそれをよく知っています。

 客と店員というシチュエーションに限らず、あらゆる場面で私が何よりも本当にイヤだと思うのは、
 何のブレーキも自制もなく、自分の感情にまかせて相手に怒りをぶつけたり、怒鳴り、恫喝し、不満を発散する人たちは、

 相手を選んでそれをやっている
という点なのです。

 彼ら彼女らは、それをやってはいけない相手と、安心してやってもいい相手を
一瞬のうちに選別して、
 
やっていい相手だけにそれをやるのです。
 怒鳴ってはいけない相手には決して怒鳴らないのです。
 自分よりも下の人間、自分よりも立場の弱い人間、
安心して怒鳴れる人間だけを怒鳴るのです。
 自分よりも力の強い相手、自分よりも地位身分の高い相手、利害が絡んでいる相手、いっそう激しい反発や反撃にあいそうな相手、
 そういう相手には、怒ったり怒鳴ったりしません。

 すごく極端な話、彼ら彼女らは、
決して「天皇陛下」を怒鳴ることはないでしょう。

 哀れです。
 そうして怒りを発散することで何らかの優越感を得て何の満足があるのでしょうか? 
 本当の怒りをぶつけるべき事どもは、世の中には他にたくさんあるのではないでしょうか? 

 自分よりも下の人間に対して優位な立場に身を置いて勝手気ままに好き放題怒りをぶつけて生きている人間は、哀れです。
 そうやって他者を恫喝し、組み伏せ、降伏や服従や恭順を引き出し、
 他者を支配し、そうすることで「いい気持ち」になって毎日過ごしている人々は、限りなく哀れです。

 自分の人生が、今後そういう人間たちと、なるべく交わることなく過ぎていくことを心から祈っている次第です。

※補足
 最近、日本の店員さんの「低姿勢ぶり」が、客の怒りを、ますます助長するのではないかとも思ったりしています。
 変に低姿勢の店員から、それにもかかわらず言いかえされたり、注意されたり、こちらの言うことを断られたりしたら、
 それだけいっそう、思わず怒りがこみ上げてきてしまうのです。
 ものすごく強いフランスの店員から同じことを言われても、「しょうがないな~」としか思わないのに、
 低姿勢の日本の店員から言われると、ミョーに腹が立つことがあります。
 いけない、いけない、と自戒しながら、自分の怒りの原因を冷静になって分析したりしています。



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